ストーリー

ストーリー

Dana Bourgeois.
Photo by Kevin Kinnear
ディナ・ボジョアは、精緻なクラフトマンシップと優れたヴォイシングの技術、木材選定眼の権威として知られています。メイン州のルイストンの工房では、ディナの仕事を支える少数精鋭の職人たちが、今日もベストを尽くしてギターを製作しています。

40年以上にわたりギター製作に携わる中で完成されたボジョアのボディスタイルは、O,OO,OOOをはじめとする小柄なピッコロ・パーラーギターから、ジャンボ・オーケストラ、ミニ・ジャンボモデル、そしてラウンドショルダーとスクエアショルダーの2種類があるドレッドノート、さらにはフルサイズのジャンボモデルまで、あらゆるプレイヤーに向けたフラットトップ・アコースティックを展開します。

著名な音楽ジャーナリストのChri Gillは、ディナ・ボジョアについてこのように語ります。

「アコースティックギター製作におけるルシアーの地位という観点から、ディナ・ボジョアは偉大な開祖の一人といえるでしょう。彼は新しいデザインのギターを開発し、定着させ、”ヴォイシング”という概念について講義と雑誌寄稿を行うことで、ルシアーブームの再燃に貢献しました。’80年代にはショーンバーグの共同設立者として、現代のギターがヴィンテージギターのトーンを再現し、さらにはそれを超え得ることを証明しました。」

Roy Hill Mill. Built in 1850. Home to Bourgeois Guitars – 2017.

ボジョアの工房は素晴らしい木材のストックでも知られています。彼が手がけるギターは最上級のトーンウッドと洗練されたカスタムオプションの組み合わせにより、私たちの目をも楽しませてくれます。

ディナは未来を見据えて、ギター製作を志す若者たちに、次世代のルシアーとしての指導と訓練を行っていきたいと考えています。

Bourgeois Guitars Crew – June 2017 Bourgeois Guitars are cherished by many professional and amateur musicians around the world. Over the years, Dana Bourgeois has been honored to see and hear what his guitars can do in the hands of players who have used the guitars on stage and record such as Doc Watson, Ricky Skaggs, Bryan Sutton, Marshall Crenshaw, Ray LaMontagne and many, many others.

ボジョア・ギターズの沿革

ボジョア・ギターズはサウンドの素晴らしさ、精緻なクラフトマンシップ、最上級の材料の使用で知られています、フラットトップギタールシアー時代の再興に大きく貢献しています。

ディナ・ボジョアがいかにして個性的なブランドを展開してきたのか、歴史を紐解いてみましょう。デザインの背景に隠されたコンセプトをご理解いただけることでしょう。

黎明 1970

アコースティックギターに対するディナの興味は、ビートルズがエド・サリバン・ショーで演じた有名なプレイから始まりました。その後Sloan氏によるギター製作に関する本”Classic Guitas Construstion”から影響を受けたディナは、Bowdoin大学在学中に初めてギターを製作し、1977年にはギターリペア工房を独りで立ち上げ、手工ギター製作家としての第一歩を踏み出しました。

Irving Sloan’s “Classic Guitar Construction”
Bourgeois & Eric Schoenberg

ショーンバーグとマーティン社とのつながり 1980

ディナはフィンガースタイル&ラグタイムギタリストのエリック・ショーンバーグがギターに対して同じ理想をもっていることを知りました。エリックがThe Music Emporiumと懇意にしていたことから、ディナは数々の希少なヴィンテージギターの音を聴き、演奏し、修理するという幸運に巡り合いました。

最小のカッタウェイ 1980s

ショーンバーグがOMカッタウェイに関心をもっていたため、ディナはカッタウェイの理想的な形状を模索すべく次々と試作品を製作しました。後にショーンバーグの”ソロイスト”として使われる試作品に用いられたカッタウェイ形状は、現在ではカッタウェイの工業的標準として考えられるようになり、数多くのモデルに取り入れられています。

Bourgeois at NAMM

オーケストラモデルの復活 1984

ディナとショーンバーグの二人はマーティン社と合意を結び、ショーンバーグ・ギターズを設立。マーティン社のレギュラーラインにOMモデルが復活する運びとなりました。当時マーティン社が製作したOMモデルのトップ材はすべてディナが木材を選定し、提供しました。今ではDモデルに次ぐ人気となり数多くのビルダーによって生産されているOMモデルはここから始まったのです。

アディロンダック・スプルースの復活

第二次大戦で木材が過剰伐採される以前、俗に”ゴールデン・エラ”と呼ばれた1930-40年代には、アディロンダック”レッド”スプルースはギターの材料としてごくポピュラーに使われていました。アディロンダック・スプルースがメイン州に多く残存していると知ったディナは、独自に木材を入手し、ギター産業に40年ぶりにアディロン・ブームを巻き起こしました。今日では多くのプレイヤーにとっての選択肢として再びアディロンダック・スプルースが人気となっています。

Bryan Sutton & Ricky Skaggs

ドレッドノート 1990s

伝説的なフラットピック・プレイヤー、トニー・ライスからの意見をもとに、ディナはバランスとパワーを兼ね備えたドレッドノートの開発に取り組みました。そのチャレンジは、木材、ブレイシング、塗装、工作技術まで、すべての工程に及びました。1990年代後半にはブルーグラスの名手リッキー・スキャッグス、ブライアン・サットンらがボジョアのギターを使い始めます。ボジョアのドレッドノートは、新世代のフラットピッカーにマッチしたものへと進化していきました。

ボジョアギターズ設立 1992

1992年、ディナはついにメイン州ルイストンにボジョア・ギターズを設立しました。才能豊かな少数の職人たちの協力を得て、ディナが’80年代に取り組んできたアイディアや製作技術を最高の作品として世に送り出せる体制が整いました。

Bourgeoisの生産方法

ディナはハンドクラフトとファクトリーメイドの長所を融合させました。ディナを中心に熟練した少数の職人が製作するという生産方法によって、ハンドメイドのポテンシャルを引き出しつつ、現代のプレイヤーが求めるハイレベルで均一なクオリティを保証しています。

アコースティックギターのヴォイシング

魅力的なルックスのトーンウッドを手にしたディナは、そのヴォイシング技術により、各弦、各音の間のバランスとレスポンスを引き出します。

木材の音色

デザインの細部まで丹念に仕上げられたボジョアのギター。ディナは木材の選定がギターのサウンドキャラクターに絶大な影響を与えると知り抜いています。ディナは「私はギターの役割に応じて木材を入念に選定し、精緻に組み合わせるようにしています」と語ります。プレイヤーにより必要なギターが異なることを、ディナは知り抜いています。プレイヤーのオーダーにもとづき、ディナは工房のスタッフとともに豊富なアイディアを形にし、一貫してハイクオリティなサウンドを提供しています。

構造と工学

ボジョア・ギターズがバランスに優れたサウンドを実現できるのは、幾つかの大きな要素によるものです。

独自のネックジョイント

ディナは多くのヴィンテージ・ギターを研究し、試行の結果、ギター製作にボルトオンジョイントをとりいれました。経年使用により変化するアコースティックギターの演奏性とサウンドのクオリティを担保するために、調整によりギターにかかる負荷を考えると、ボルトオンジョイントが最も合理的であるとディナは考えています。

イージー・リセット

ボルトオン構造を採用する多くの製作家がトップと指板までを接着するのに対して、ボジョアはボルトを用いて組み立てをしています。これにより、レンチを使うだけで難なくネックを完全に取り外すことができます。世界で最もネックリセットが簡単なボジョアのギターは、最初のオーナーだけでなく、譲り受けた次のオーナーにも喜ばれることでしょう。

トラスロッド

ボジョアの革新的な点として、ダブルアクション・トラスロッドが挙げられます。ロッドの重量と音響特性の面で、鉄製ロッドは70年以上前にはポピュラーであったノン・アジャスタブルのTバーと似た性質を持っています。また、ボジョアは伝統を重んじつつも新しい技術を取り入れ、高い弾性をもつカーボンファイバーでネックを強化しています。高品質なカーボンファイバーの材質はアメリカンカップのヨットのマストに採用されているものと同じです。これによりネック剛性の向上と同時に、音質の明瞭さ、レスポンス、サステインが飛躍的に向上しています。

スキャロップド/ノンスキャロップド・ブレイシング

ディナは長年にわたり「リッチで、明瞭で、印象深く、力強く、そして高音もよく響くギターを作りたい」という目標に向かってひたむきに努力してきました。トニー・ライスから提案された「ボジョアOMの特徴を兼ね備えたドレッドノートを開発する」という課題に長年取り組んだのちに、ディナは「Xブレイシングの低音側のみを削り、高音側は残すことで、理想のサウンドを鳴らせる」という結論に達しました。その後のギターは、ドク・ワトソン、ブライアン・サットン、リッキー・スキャッグス、キース・セウェル、ボブ・マイナー、スコット・フォアら数多くのトッププレイヤーを魅了しました。

スタンダードとなったオーケストラモデル

ディナは「バランス、レスポンス、奥深い音質、明確さが組み合わされたOMモデルは、私の理想のギターです。」と語ります。すべてのギターはOMのように鳴るべしというのがディナの考え方です。彼は最高のドレッドノートはOMと似た性質を持ちながら、ドレッドノートとしてのキャラクターを際立たせると考えています。「私はいろんなやり方で、すべてのモデルにこの考えを応用してきました。私にとっては、どのギターもサイズが違うだけのOMモデルなのです。バランス、レスポンス、奥深い音質、明確さ。すべてのギターに求める私の理想です」。

トッププレイヤーに選ばれるギター

クラシカルなデザインから影響を受けつつも新しいものを生み出すというボジョアのコンセプトは、その革新的な構造と個性的な意匠で際立った存在といえます。目の肥えたギタリストたちがこぞってボジョアのギターを使うのは、ディナが早い時期からトッププレイヤーたちとともに開発に取り組み、彼らの声に耳を傾けて開発を重ねてきたからです。ボジョア・ギターズの顧客としてトップレベルのアコースティック・プレイヤーが名を連ねている理由はそこにあります。

Top: Bryan Sutton,Courtney Hartman, Keith Sewell & Bob Minner at IBMA.Bottom: Martin Simpson

AGED TONE™ギター 2012

ディナの探求は今も続いています。Aged Toneシリーズはトラファイ加工により自然なエイジングを早められたトップ材を用いてAged Tone塗装をほどこし、ハイドグルーを用いて組み立てられます。こうした工夫により、今までにない「何十年の時を経たヴィンテージギターのレスポンスと、箱鳴りのサウンドを奏でるモダンなギター」を製作できるようになりました。さらに、ボジョアはシアノアクリレートを用いた硬く薄い塗装を開発し、「50年以上経過したニトロセルロースラッカー塗装と同様の、望ましい音響特性、硬さ、薄さ、しなやかさをもった塗装」に仕上げる技術を実現しました。

展望

ディナは10数人の熟練したビルダーからなるチームを監督し、年間400本あまりのギターを製作しています。一人ひとりのプレイヤーからのオーダーそのものが、新しい技術への挑戦となります。常に新たなチャレンジを続けるボジョアの哲学を、その作品を通じて感じ取っていただけることでしょう。